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行政・環境事件

「勝訴」、「国と東電 断罪」、「被害救済 広げる」の3本の旗-「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の判決下る-

(2020年事務所ニュースから)

弁護士  南雲芳夫

1.生業訴訟の結審から判決へ

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟は、安全対策を怠って原発事故を引き起こした国と東京電力の法的責任を追及し、原発事故の被害者の救済を求め提訴された集団訴訟である。事故から2年後、2013年3月に福島地裁に提起された。原告数は3824人にのぼり、全国でも最多の原告を擁する訴訟となっている。
私は、福島から遠方の地であるにもかかわらず、はしなくも原告弁護団の幹事長を引き受けることとなり、裁判提訴から4年半、この訴訟に心血を注いできた。2017年3月の結審の際に、判決期日が10月10日と指定された。原告側の主張・立証の到達点からして勝訴は確信していたものの、期待と裏腹の心情もあり緊張して判決を迎えた。

2.判決言い渡し

金澤秀樹裁判長が言い渡した判決は、国と東京電力の法的責任を明確に認め、政府の定めた賠償指針等よりも広い地域を賠償の対象とし、かつ賠償金の上積みを認める内容で、原告3824名のうち、2907名の請求が認められた(認容額合計は4億9795万円)。
裁判長による主文の言い渡し後、法廷を飛び出した3人の弁護士が「勝訴」、「国と東電 断罪」、「被害救済 広げる」と書かれた3枚の旗を大きくかかげると、裁判所の門前で待ち構えていた1000名を超える原告・支援者から大きな歓声が上がった。遠く離れた、東京の東電本社前、沖縄(避難先の原告が集結)でも、同時に「旗出し」を行い、福岡でも集会が持たれ、各地の原告や支援者と喜びを分かち合った。福島県の地元主要新聞「福島民報」は、衆議院選挙の公示日であったにも関わらず、号外を発行して生業判決を報じた。

3.判決が国と東京電力の責任論を明確に断罪したこと

国と東京電力は、事故は「想定をはるかに超える津波によってもたらされた天災である」として、自分たちの責任を一貫して強く否定してきた。これに対して、判決は、政府の地震調査研究推進本部が公表した2002年「長期評価」という地震想定について、「客観的かつ合理的な根拠を有する科学的知見」であるとし、これに基づき原発敷地まで浸水する津波を予見することが可能であったと結論づけた。そして、津波の襲来が予見できた以上、これに対して必要な対策を講じておくことは国、東京電力の当然の責務であり、必要な対策を講じておけば福島原発事故の回避は可能であったと明確に判示した。

4.原子力発電の問題に向き合うこと

福島原発事故による被害の広がりと抱える問題の深刻さからすれば、一訴訟の判決で解決し得る範囲は当然限定されている。福島原発事故は福島県民をはじめとする地域住民に塗炭の苦しみを与え続けている。代表として法廷に立った原告は、そうした被害の一端を生々しく証言された。そうした声に思いを致す時、福島原発事故から教訓を学ぶとすれば、原子力発電が抱える想像を絶する危険性を真摯に見つめ、発電に原子力を利用することの可否を考え直すことでしか得られないと改めて考えている。

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