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刑事

死亡交通事故で正式起訴された地方公務員について罰金の求刑・判決により免職を免れた事件

長年勤続していた地方公務員が夜間に自動車を運転中、信号のある交差点で横断歩道を渡っていた歩行者に衝突する事故を引き起こしてしまった。被害者の方の怪我自体は軽微なものであり、被害者の方はその場に座りこんだまま携帯電話を使って知り合いに事故にあったことを知らせていた。他方、事故を起こした公務員の方は、被害者の脇に自動車を停止させて救急車を呼んでいた。そうしたところ、たまたま通りかかった通行人が気を使ってくれて、この自動車を交差点から移動させてくれた。しかし、逆にこれによって交差点が通行可能となり、その直後に、別の自動車が交差点に高速で進入してきて被害者の方をはねてしまい、2度目の事故によって被害者の方は亡くなってしまった。

1度目の事故による怪我自体は軽微なものであったものの、それが契機となり、一人の方が亡くなるという取り返しのつかない事態となった。

弁護の依頼を受け、被害者へご遺族の真摯な謝罪を繰り返し、また任意保険会社にも働き掛けて十分な賠償を実現することに務めた。検察官に対しては、こうした対応を説明するとともに、長年まじめに勤続した地方公務員であり、正式起訴とされ禁錮以上の刑となれば自動的に失職しかつ退職金の支給もなくなるという重大な不利益を被ることを訴え、略式手続による罰金での処理を要望した。

しかし、検察官としては、第2の事故が関与するとしても、被害者の死亡という重大な結果となっており、公務員の方の過失も否定できないとのことで、正式起訴されるに至った。一般に、検察官が正式起訴を行うということは、罰金での処理では足りず禁錮以上の刑に処するべきという判断を示しており、裁判所も、情状によって執行猶予を付けることはあっても、禁錮刑を選択することが通例である。この時点では、禁錮刑を回避することは絶望的ともいえる状況であった。

しかし、この件については、起訴された後も諦めることなく、被害者の方への謝罪と賠償の努力を続けた。そして、公務員の方と十分協議した上で(長年の弁護活動の経験の中でも行ったことがない)異例ともいえる可能な限りの対応を行って、その結果を検察官に報告し、求刑を罰金に留めてもらうことを要望した。

その結果は、裁判の最終日の検察官の論告求刑まで不透明であった。結審に当たっての検察官の求刑は、最終的には、罰金の上限額であった。検察官の求刑が罰金となったことから、裁判官も、罰金の上限額という判決を下すこととなった。

こうして、異例な展開の後、結果として、依頼者の方は、公務員としての稼働を続けることが保障されることとなった。

亡くなった被害者とご遺族にとっては誠に痛ましい事故であったが、軽微な事故が、予想外の展開によって、重大な死亡事故に拡大してしまった点については、公務員の方にも気の毒な部分が大きい事案だった。

弁護活動としては、正式起訴となっても諦めることなく、最後まで罰金を目指した活動が実を結び、諦めてはいけないという教訓を再確認した事案であった。

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