労働関係
東京電力思想差別事件

東京電力は、電力の独占的な供給を法律で補償されている地域的独占企業であり、経団連の会長等を輩出するなど、わが国の経済界を代表する企業の一つである。
その東京電力が、企業内で、組合活動に参加する共産党員に対して、その政治思想を理由に、賃金や昇格に関して長らく差別的な取扱いを続けてきたことに対して、差別を受けた共産党員らが、思想・信条の自由を守り、自由と民主主義をわが国の独占企業の職場とわが国全域に行き渡らせるために、差別の撤廃を求めて提訴した集団訴訟である。
提訴は1976年10月。裁判所は、東京、横浜、千葉、甲府、前橋、長野の5地裁であった。解決時の原告数は、165名に及んでいる。
提訴後10年の時点で弁護士登録したことから、後半の各論立証から参加することとなった。
判決は、93年8月前橋地裁、同年12月甲府地裁、94年3月長野地裁、同年5月千葉地裁、同年11月横浜地裁と5連続勝利となった。こうした経過を経て、東京地裁判決を迎えることなく、95年12月25日に、会社が、原告らの処遇の見直しを行うこと、将来にわたって公正に取り扱うこと、解決金を支払うこと等を含む全面勝利の解決に至った。
わが国の独占企業を代表する東京電力を相手に、19年余にわたる長い闘いとなったが、その成果は、ひとり東京電力に留まらず、わが国の独占企業における労働関係法令の遵守について、大きな寄与をしたものといえる。