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労働関係

首都圏建設アスベスト被害に関する集団訴訟

首都圏建設アスベスト訴訟
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アスベスト(石綿)は、これを吸引すると肺ガン・中皮腫などのガンを引き起こす発ガン性がある。そのため、現在では、法律によって製造等が禁止されている。しかし、戦後、特に高度経済成長とともに、石綿の輸入は伸び続け、特にそのうち7割程度は建材として使用されてきた。現在でも、現に建っている多数の建物にはかつて広く使用されていた石綿含有建材がそのまま残っている。よって、今後も、建物の補修解体等によって、これらの石綿含有建材から、石綿が飛散することが避けられない状態にある。解体作業に従事する労働者の安全衛生の側面からも、また、解体作業に隣接して居住する一般住民が曝露する大気汚染問題としても、重大な問題になることは不可避な状況である。

これまで、多数の建設労働者は、建設作業に従事し、石綿含有建材を切断し、研磨するなどして石綿粉じんに曝露してきたのであり、その結果として肺ガン、中皮腫、石綿肺などの疾病に罹患し、労災に認定されてきた。建設労働者は、石綿の有害性について知らされないままに放置されたのであり、この被害についてなんら責任を負う立場にはない。

こうした中、2008年に、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県の建設労働者が、石綿含有建材を製造販売した建材メーカー44社と、石綿の製造を禁止してこなかった国の責任を追及して裁判を提起した。

原告らは、いずれも長期間にわたって石綿曝露作業に従事して、前記の石綿に起因する疾病に罹患したものとして、既に労災認定を受けているものであり、石綿への曝露と疾病罹患との因果関係は事実上、争いがない問題となっている。

争点は、次の点である。

すなわち、建設現場における石綿粉じんへの曝露が、長期にわたる累積的なものであり、個々の建材メーカーとの関係でどの建材メーカーの製造販売した石綿含有建材から曝露があったかを特定することが不可能であることから、建材メーカー間に共同不法行為が成立し、その連帯責任が問えるかという点である。

首都圏建設アスベスト訴訟
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また、国との関係においては、労働安全衛生法に基づいて、石綿粉じん曝露回避のための規制権限をいつの時点で行使すべきであったといえるのか、また製造販売の禁止等をいつの時点で行うべきであったのか、という点である。

2008年の提訴に続き、2010年には第2次提訴を行った。訴訟は東京地裁(東京と埼玉、千葉の原告)と横浜地裁(神奈川の原告)とで同時並行に進んでいるが、いずれも2011年秋には結審が見込まれており、早期の判決と被害の救済の実現が求められる。

また、前記の通り、アスベスト・石綿の問題は、今後、老朽化した建物の解体時期を迎えて大気汚染問題としても重大な問題となることは必至である。さらに、石綿被害救済法も改正が予定されているところであり、その法改正に与える影響からしても判決の内容が注目される。

首都圏建設アスベスト訴訟判決:初めて国の責任を認める!

(2013年事務所ニュースから)

弁護士 塩谷 真理絵

2012年12月5日、東京地裁にて、首都圏建設アスベスト訴訟の判決が言い渡されました。

この裁判は、建設現場で作業に従事し、石綿粉じんに曝露したことにより石綿関連疾患に罹患した、東京、埼玉、千葉の患者ら308名が、国と石綿建材メーカーら42社に対し、一患者当たり3850万円(弁護士費用350万円含む)の損害賠償を求めたものです。

東京地裁は、国の労働安全衛生法に基づく規制権限不行使の違法を認め、158名の患者に対し、総額10億6394万円の賠償を命じました。判決は、国による規制は全体として実効性を欠いており、事業者への罰則を伴う防じんマスクの義務付け等の規制を怠ったと指摘しています。最大のアスベスト被害を出している建築現場における国の規制権限の不行使の違法性を初めて断罪したものであり、画期的な判決であると評価できます。

他方で、東京地裁は、被告メーカーらの賠償責任を否定しました。判決は、建材が石綿を含有していること、防じんマスクを着用しないまま粉じんに曝露した場合には肺がん等に罹患する危険性があること等を明示すべき警告義務があったのに、これを怠ったとして、被告メーカーらの注意義務違反(過失)を明確に認定しましたが、しかし、因果関係の点で、原告らの主張に一定の共感を示しながらも、被告メーカーら42社の間に法律が要求するだけの結びつきが認められないことなどを理由に、法的な賠償責任を認めることはできないとし、政治的解決を望むと結論付けました。また、判決は、実態は労働者と何ら変わらない一人親方や零細事業主であった患者らについては、労働安全衛生法の保護対象である「労働者」に当たらないとして、救済の対象から外しました。こうした判断は、極めて不当で、容認できないものです。

この日の判決に至るまで、2008年5月の第一次訴訟提起から約4年半、2010年4月の第二次訴訟提起からも2年半以上という、長い歳月が流れました。308名の患者のうち、提訴時で既に140名の患者が亡くなっていましたが、判決を待つ間にも、さらに59名の原告が亡くなりました。

私たち建設アスベスト弁護団は、こうした悲惨なアスベスト被害の実態を改めて重く受け止め、国と被告メーカーらの法的責任を明確にし、原告全員に対する誠意ある謝罪と賠償を勝ち取るべく、最後まで闘い続けます。

建設アスベスト訴訟 3件の高裁判決で前進

(2019年事務所ニュース記事から)

弁護士 南雲 芳夫

建設アスベスト訴訟は、建材の切断や加工の際に、建材に含まれている石綿(アスベスト)の粉じんにばく露して、肺がんや中皮腫、石綿肺などの重篤な疾病にり患した建設職人やその遺族が、被害の救済を求めて、国と建材メーカーを被告として提訴したものです。

2012年12月の東京地裁の判決では、国に対して勝訴したものの、救済対象は、労働者として作業に従事していた原告に限定されました。これに対して、昨年3月の東京高裁判決では、一人親方や自営業者として建設作業に従事していた原告についても、被害救済を認める判決を勝ち取ることができ、地裁判決では救済を受けられなかった約半数の原告も救済されることとなり、大きな前進を勝ち取りました。

これに続いて、8月及び9月の2つの大阪高裁判決においては、東京高裁に続き一人親方や自営業者を救済するとともに、建材メーカーの責任をも断罪する判断が示されました。

事件はいずれも最高裁に係属することとなりましたが、既に多くの原告が他界するという痛ましい被害状況にあります。最高裁判決の結果を待つのではなく、国と建材メーカーの責任において、被害救済の制度を早期に構築することが求められています。」 を追加する。

建設アスベスト訴訟 3件の高裁判決で前進

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