秩父の山間地において、東京電力による夜間停電の際に、それを知らずに自宅階段から転落した高齢女性Aさんが、その事故によって後遺症を残した事件に関して、依頼をうけ東京電力に対する賠償請求を担当した。

 長野県内で落雷による送電設備の破損が発生した。この際には停電とはならなかったものの、その破損部位を修理するために、計画的な停電が必要となった。東京電力は、停電予定地域の秩父地域に有線放送を使用して停電の情報を流し、また宣伝車を走行させて情報周知に務めた。

 しかし、Aさんは有線電話にも加入していなかったし、またあまりに山奥だったことから東京電力の宣伝車も巡回しなかった。こうしたことから、夜間停電の事実を知らないままでいたAさんは、停電となった夜間に、全く何も見えない状況の中で、トイレに行く際に、トイレ入り口と階段降り口を間違え、階段から転落してしまったのである。

 本件に関しては、東京電力の電力供給契約の約款を取り寄せて、電力の供給義務と供給しなかった場合の免責の規定等について検討を加えたところ、十分、東京電力の責任を追求することは可能と考えて、交渉によって一定の賠償金を確保するという弁護方針を確定した。

 東京電力の顧問弁護士と交渉する過程で、相手がたは、責任を完全には否定できないが、実際の責任の有無やその範囲については争いたいというスタンスをとっていることがわかった。

 こうした相手方の対応を踏まえつつ、また当方本人の転落について、自身の不注意要因も否定はできないことから、最終的には、話し合いによる解決が有利と考え、訴訟提起前にかなりの賠償金の支払いを約束させて、示談に至った。