G県・M町も出資する第三セクターが運営するスキー場において、小学5年生の男子児童が、初級ゲレンデと初級ゲレンデの間にある沢に転落して、頭を打ち死亡した事件が発生した。通常の積雪量であれば、二つのゲレンデの間に沢があることは容易に認識できるが、この年は豪雪であり、沢の両側まで深く雪が積もり、注意しないと二つのゲレンデの間に沢があることに気がつかない状況になっていた。

 通例、スキー場は、ゲレンデの限界をしめすロープや網をはってゲレンデ外であることを表示し、かつ、そこから出ないように警告している。しかし、事故現場にはゲレンデ外であることを示す表示は何もなかった。このことから、小学生が対岸のゲレンデに直接行けるものと誤信して進んでしまい、沢に転落したものと思われる。

 法律上は、民法上の工作物責任が問題となり、両親が原告となり、スキー場の設置者に対して死亡事故に基づく損害賠償を請求する訴訟をさいたま地方裁判所熊谷支部に提起した。

 併せて、スキー場の管理者について、沼田警察署に対して安全管理に過失があったとして、業務上過失致死に基づく刑事告訴も行った。刑事告訴については、いったん検察庁において嫌疑不十分を理由に不起訴処分とされたが、両親は検察審査会に不服申し立てを行った(審理中に被疑者が死亡したことから審査会の審理は終了した)。

 裁判では、スキー場側が、圧雪されているスキー場のゲレンデ部分と圧雪されていないゲレンデ外の部分の境界について警告表示をする義務があるか否かが主要な争点とされた。スキー場側の言い分は、圧雪されていないことでゲレンデ外であることは簡単にわかるのであり、そうした表示の義務はないということであった。当方は、スキー場の安全管理に関する全国的な協議会の責任者の方を鎌倉まで訪ねて外国の文献を含めて多数の資料をお借りするなどして調査を進めた。しかし、ヨーロッパのスキー場の管理などを基準にすると、スキーヤーの自己責任がかえって前面に出されていることが分かった。

 最終的には、事故発生の1週間前に、上空からこのスキー場の様子を撮影した写真の存在が明らかとなり、その写真によれば、事故現場の沢の周辺には多数のスキーの滑った跡が写っており、多くのスキーヤーが事実上、この事故現場付近に入り込んでいたことが証明され、スキー場側も責任を認めた和解により解決をすることとなった。