埼玉県内のある中学校において、土曜日のサッカー部の練習中に、生徒Aが蹴ったシュートがゴール前にいた生徒Bの顔面を直撃し、生徒Bの目に視力障害・水晶体摘出等の後遺症が残ったという事案である。この事件については、当初、家族は事故後の対応が不十分であったとして学校側を強く非難する発言をしていた。しかし、実際の裁判では、ボールを蹴った生徒Aの責任追及が前面に出てくることとなった。

 私は、シュートを蹴ったとして賠償請求の矢面に立たされた生徒Aの側で裁判を担当することとなった。なお、生徒Bは、部活の監督が不十分であったこと、事故通報後の学校側の対応が不十分であったとして、生徒Aとともに、学校の設置者である地元の町自体も被告としていた。

 本件では、セットプレーでのシュート練習の場合は、いったんボールを蹴ってシュート練習自体を始めてしまえば、各選手はそのシュート練習の流れに沿って、シュート練習に意識を集中すべきであり、それ以外のことが判断の後景に退いたとしてもそれ自体は当然のことであるというを中心に主張した。すなわち、A君としては、セットプレーのシュート練習の一員としてそのセットプレーに参加した以上は、的確なシュートを決めるために全神経を集中させるべきであり、自分がそのセットプレーの流れの中でシュートをする場合に、キーパー以外の練習生がボールの流れに気を使わずゴール前に立っていることまで予測する義務はないという点が中心的主張となった。

 本件では、双方の主張・立証を尽くした後に、実際に事故が発生した中学校のグラウンドで事故の再現が行われた。そこにおいて、実際のセットプレーによるシュート練習の際に、練習参加者としてはボールの流れとキーパーの位置に気を配るべきものであり、それ以外にゴール前にキーパー以外の者が立っているか否かまで注意を求めることが無理を強いるものであることは、十分理解してもらえたのではないかと思う。

 本件については、被害者が一定の障害を残したことは事実であり、A君のご両親とも十分話し合った上で、法的な責任とは別に、一定の解決金を支払って関係を確定させるということも検討した。しかし、一緒に被告とされていた町は一切の譲歩を拒否したこともあり、最終的には判決に至った。

 結論は、当方の主張が全面的に採用され、過失なしということで、賠償請求は棄却された。そして、この1審判決はそのまま確定することとなった。

 当然の結論とはいえ、こうした裁判を続けることは、A君にとっても、クラブ活動を指導した学校側においても、それぞれ大きな負担となったことは間違いない。

 被害者のB君が後遺症を残した被害者であることは間違いないのであり、ただし、それをA君に対する責任追及とした裁判の組立自体が間違っていたとしかいうしかない事案であった。