頸肩腕傷害などの労働災害があった場合に、治療が長期化してしまうことがままある。こうした慢性的な症状に対して、東洋医学的な治療方法として、鍼灸治療が有効であることは一般的に承認されているところであり、現に労災保険においても、針灸治療は、療養補償給付の一つとして認められているところである。しかし、頸肩腕傷害などの労災の治療が長くかかる傾向にあることに対して、旧労働省は、針灸治療については、一律に1年間を限度にしか認めないという通達を出して、形式的・一律の期間制限を課していた。

 これに対して、1年を超えても鍼灸治療を受けることを希望する被災労働者が、その療養補償給付を請求したところ、労基署長が、前記の通達を根拠に不支給決定を行った。これに不服である被災労働者からの依頼により、労基署長の不支給決定に対する行政訴訟(取り消し訴訟)を提起した。

 この裁判自体は、労災保険給付の内容決定における裁量的な判断の尊重という、きわめて困難な法律論が存在した。一審判決も、この点の裁量権を尊重して、労基署長の判断を追認するものとなった。

 当然、控訴した。

 控訴審の進行過程において、別に提起されていた、頸肩腕傷害についての治療全体について期間制限の可否が争われた訴訟で、一律の期間制限を否定する判決が出るに及んで、針灸治療についても一律の期間制限を規定する前記通達が廃止されるに至った。

 その結果、この事件は訴訟では敗訴したものの、運動的な取り組みの中で当初の目標とした通達の改正を勝ち取り、目的を達して終了した。