北九州から、関東に出稼ぎで建設作業(配管作業等)に従事していたYさんが、作業中に脳出血を発症し、死亡したといういわゆる過労死事案である。

 この事件は、Yさんが、親しい職人を数人引き連れて出稼ぎに来ており、アパートを借りて共同生活をしていたことから、そもそもYさん自身が、事業者ではないか?労働者に該当するのか?という「労働者性」も問題となる事案であった。

 東京の中央労働基準監督署長は、労働者性は認めたものの、過労と発症の因果関係を認めず、労災申請を棄却した。しかし、この事案は、長時間労働の果てに、冬期において、便器の据え付けのために数10キロもある便器を中腰で支えている最中に脳出血を発症したものであり、その業務起因性は明かとも言うべき事案であった。

 審査請求に対して、東京の労災審査官は、逆転で労災と認める決定を下した。しかし、遺族が内縁の妻であるだけでなく、それが重婚的なものであったことを理由に、葬祭料の支給は認めたものの、遺族補償給付(労災遺族年金)については不支給決定を下した。

 そこで、東京地裁に、遺族補償給付に関する決定の取り消しを求める行政訴訟を提起した。戸籍上は、たしかに重婚的な内縁関係になっていたものの、既に法律上の妻とは10年以上音信がなく、夫婦関係は実態を失っていたのであるから、例外的に重婚的な内縁関係にあっても遺族補償給付を補償すべきであるという法律論を展開した。

 この事件については、一審で勝訴し、遺族補償給付も受けられることとなった。労災申請をしてからすでに8年以上の歳月が経っており、その間の遺族補償給付がさかのぼって支給されることとなった。