当事務所では、さいたま市民オンブズマンの一員として、群馬県の吾妻渓谷に建設が予定されている八ツ場ダムについて、このダムが、治水の面でも、利水の面でも全く必要性のない無駄なダムであることから、埼玉県を被告としてその建設の差止を求める住民訴訟を担当してきました。

2005年事務所ニュース記事より

無駄なダムはいらない 八ツ場ダム差止訴訟


埼玉裁判証言のスライド 2009年9月2日

 無駄な公共事業の典型ともいえるダム建設については、近年、「脱ダム」の流れの中、長野県で先進的な取り組みが進められました。九州では川辺川のダム計画に対する地元の反対運動が大きな成果を上げています。群馬県でも、戸倉ダムの中止、倉淵ダム計画の中止など、脱ダムの流れは進んでいます。
 こうした中、群馬県の吾妻川に計画中の八ツ場ダムの事業費が、昨年1月に当初の2110億円から4600億円に倍増され、全国で最も「高いダム」になりました。これを契機に、利根川流域の1都5県で八ツ場ダム計画の見直しを求める声が大きくなりました。
 八ツ場ダムは国(国土交通省)を事業主体として、利根川水系吾妻川に設置される、治水及び利水を目的とする多目的ダムです。こうした目的にあわせて、埼玉県も953億円を負担することが予定されています。
 しかし、利水(水の利用)については、節水の進展、人口の頭打ちそして減少などで、水道の用水を高い費用をかけて確保する必要はありません。
 また、治水(洪水対策)については、利根川の治水計画自体が、非現実的な過大な洪水流量を前提としており、実際には、河道の整備を計画通りに進めれば大雨にも十分対応が可能とされています。
 八ツ場ダムは、まさに「ムダなダム」の典型です。
 そうしたことから、昨年9月10日付で1都5県の住民が、ダム建設資金の支出の差止を求める住民監査請求を行いました。埼玉県でも、893名の住民が監査請求に参加しました。しかし、埼玉県監査委員は、昨年10月7日、充分な調べを行わないまま監査請求を却下する決定をしました。
 これを受けて、住民はダム建設資金の支出の差止を求める裁判を提訴しました。裁判は、2月から本格的に始まります。
 日本でもっとも高いダムをめぐり、無駄な公共事業を断罪する裁判にご注目下さい。また、裁判を進めている「八ツ場ダムをストップさせる会」では、年間費1000円で住民訴訟を支えるサポーターを募集しています。ご協力をお願いします。

2011事務所ニュースより

八ツ場ダムの建設差止事件の判決下される

 埼玉県を被告として八ツ場ダム建設への費用支出の差止を求める住民訴訟は、2004年にさいたま地方裁判所に提訴され、東京、群馬、千葉、茨城、栃木の各都県の裁判と連携を取りながら、進められてきました。約6年の審理を経て、2010年7月14日に判決が言い渡されました。
 判決は、八ッ場ダムの利水面における必要性に関しては、原告らが主張する「水需要の予測、供給能力の評価及び八ッ場ダムによる水源の確保が不要であるとの評価が1つの評価としてありうる」ことは認めました。しかし、県が国土交通大臣による負担金納付通知や関係地方公共団体との協定により義務づけられた支出を行うことが『違法』と評価されるのは、その根拠とされる納付通知や協定が「著しく合理性を欠き、予算執行適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存する場合」でなければならないと、県の支出の違法判断のハードルを極めて低く設定し、各種負担金の支出に違法はないと結論づけました。
 また、最も注目されていた八ッ場ダムの治水上の必要性に関しては、原告側が、大雨の時にも伊勢崎市の基準地点には毎秒1万6750?/秒しか流れないから、それより下流の流量・水位の低減を図る施設である八ッ場ダムは不要となるとの主張を展開してきたのに対し、判決はその主張を十分理解せず、まったく見当違いの問題設定をし、ダムに治水効果を想定することは不合理ではないとの結論を導きました。
 総じて、行政過程に対する裁判所による審査を通じて、行政過程の判断の適正さを高めるという行政訴訟の意義を理解しない、行政追随の判決と評価せざるを得ません。
 裁判とは別に、民主党政権になって、前原前国交大臣が八ツ場ダムの中止を明言し、これに対して各都県がダムの負担金の拠出を拒否する動きもあり、他方で、馬淵新国交大臣が検証を明言するなど、政治的な動きが急であります。
 今後も政治の動きをにらみつつも、事実と道理に基づいて、無駄なダム計画の問題点を東京高等裁判所で追及し続けることとなります。