2013年事務所ニュースから

弁護士 南雲芳夫

 政府は、昨年12月には、福島原発事故の「収束」を宣言した。しかし、事故から1年9ヶ月余が経過した今日に至っても、十数万人の住民が避難生活を余儀なくされている。引き続き福島県内に留まっている住民も、放射線被ばくによる健康影響の不安と隣り合わせの生活を強いられている。被害の回復とはほど遠い状況にある。

 政府は避難地域の再編を進めて、年間20ミリシーベルト以下の地域については住民の帰還が可能となるとして、補償の打ち切りを進めている。しかし、長期の住民避難により病院や商店などの生活基盤が破壊されており、そうした状況下での生活は困難を伴う。また、子どもを抱える家庭においては、被ばくによる影響を恐れて、帰るに帰れない実情にある。こうした中での避難に伴う補償の打ち切りは、被害の切り捨てに等しい。

 昨年10月に「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団が結成され、私も幹事長としてこの活動に従事してきた。この間、原発事故を原因として自殺された篤農家の事件、自営業者の営業損害の請求、また、いわゆる自主的避難地域からの避難者の賠償請求等について関与してきた。

 これに対し、東京電力の賠償に関する姿勢は、被害者の生活の再建に背を向けるものといわざるを得ない。とくに、今年7月に発表した「住宅等を含む損害についての包括的な賠償基準」は、帰還が困難な住民にとって、到底、生活の再建が望めないものである。

 国と東京電力は、「国策民営」といわれるように、あい協力して原発を推し進めてきた。弁護団では、両者を被告として、地震・津波対策を怠ってきたことに基づく責任を追及する訴訟の準備を進めている。脱原発を求める国民的な運動と手を携えて裁判を進めていきたいと考えている。