「離婚事件が終わるのにどれくらい時間がかかりますか」と質問されることは多い。相手のあることであるから、相手次第・事件次第ではあるが、本件は、夫婦が子どもの親権を争い、離婚調停、離婚裁判、子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件、人身保護命令請求事件を経て、3年をかけて解決した長い離婚事件である。

 G県T市在住のAさんは、上場会社勤務のエリート会社員である夫との間に長男をもうけたが、夫の「ばか」「のろま」などの暴言や異常な監視行動等に耐えかね、離婚を決意し、法律相談に訪れた。

 すぐに離婚調停を申し立て、同時にAさんは長男を連れて実家に戻ったが、夫はAさんが長男を虐待していると警察を呼び騒ぎたて、翌日には、長男の通う小学校へ行き、長男を引き渡すよう数時間に渡って要求した。結局、夫が長男を一日限りで自宅にて預り、翌日から小学校に登校させると約束したことから、Aさんは一日だけのつもりで長男を夫に預けることにした。しかし、夫は約束に反し、長男を実家に連れ、そのまま転校手続きをとり、Aさんに一切会わせようとしなかった。その後、離婚調停及び離婚裁判において、長男と面接させて欲しい旨何度も申し入れ、夫は長男を裁判所等に連れてくることを複数回約束したにも関わらず、いずれも、夫が欠席をしたり、長男が嫌がっているとの理由を付けて、長男を会わせなかった。そこで、離婚裁判中に、別途、子の監護に関する処分(面接交渉)を申し立て、夫がAさんに対して月に1回の割合で面接交渉をすることを許す旨の審判を得たが、審判確定後も夫が長男を会わせることはなかった。

 離婚裁判の第1審判決は、(1)離婚する、(2)長男の親権者はAさんとする、(3)養育費を月3万5000円支払え、(4)夫はAさんに対して50万円を支払えという、Aさんの希望に添う内容であった。夫は控訴し、高等裁判所が控訴を棄却すると、さらに最高裁判所への上告を行った。当然、上告は却下され、第1審判決が確定した。

 しかし、夫は確定後も長男の引き渡しを拒否した。

 そこで、最終的な手段として人身保護命令を裁判所に申し立てた。人身保護命令とは、不当に拘束されている者の拘束を解かせる命令であり、刑罰によって実効性が担保されている。弁護士も滅多に行わない非常に稀な手続きである。人身保護命令申立事件においても、夫は長男の引き渡しを拒んだが、裁判官らの説得に応じ、翌日、近くのファミリーレストランで、夫はAさんに長男を引き渡し、ようやく事件が終了した。事件受任から3年が経過していた。

 自宅へ向かう車の中、Aさんは3年ぶりに会うわが子に涙し、肩を震わせながら何度も抱きしめていた。

 後日、Aさんから、長男が連れ去られていた間食事をきちんと与えられていなかったこと、友達の家でお菓子をもらってしのいでいたこと、3年間でそれほど身長が伸びていなかったことを聞いた。

 離婚裁判の中で、Aさんは「長男のことを片時も忘れたことはない」と述べていた。Aさんにとってこの3年間はあまりに長い時間であったと思う。しかし、弁護士もはがゆい思いで3年を過ごしたのも事実である。弁護士は法律の手続きの中でしかたたかえない。裁判所の判決や命令に背くなど規範意識を欠如している相手では、たとえ法律を武器にしても迅速に依頼者の利益を実現させることはできない。やむを得ない時間ではあるが、3年もの長い時間をかけてしまったことが弁護士として残念に思う。

 ただ、現在、Aさんと長男が2人で健やかに過ごしていることが、私の励みとなっている。