新聞配達をしながら生活していた46歳の男性Aさんが、早朝の出勤後に店の道向かいの自販機にコーヒーを買いに行く横断中に80km以上のスピードで走ってきた自動車にはねられ、脳挫傷を含む大けがをして、常時介護が必要となる大けがを負った事案を担当した。

 Aさんは、元もと精神疾患を抱えていたが、この事故により判断力が低下し、成年後見の決定を受けた。

 この事件の争点は、1つは、独身であり妻子もないAさんの将来の介護費用をどの程度に見積もるかという点、2つに、道路を横断した際に「飛び出した」という目撃証言による過失相殺、3つに、Aさんが元もと精神疾患を抱えていることによる逸失利益(将来の稼働利益)の算定方法をどうするかという点であった。

 Aさんの代理人としては、介護費用については、Aさんの父親は高齢で到底、Aさんの介護は負担できないこと、きょうだいは、いずれも実家を離れそれぞれ家庭・仕事を持って生活していることから、Aさんの介護を引き受けることは困難であることを主張した。

 「飛び出した」という目撃証言については、その証言をつぶさに検討すると、ようするに「道路をAさんをガラス越しにみたが、小走りで渡っていた」という点しか目撃しておらず、横断開始の直前に左右の確認をしたか否かについては見ていなかったことから、「Aさんは、左右確認をした上で加害車両が遠方にあることから充分渡れると考えて小走りに横断したものの加害者車両が80kmという異常な高速で走ってきたことから衝突してしまった可能性が否定できない」と主張した。

 また、既存障害である精神疾患については、自賠法上の後遺症として14級相当であり、5%の労働能力の低下しかなかったと主張した。

 最終的には、判決に至らず和解によって解決したが、将来看護費については日額で1万5000円程度を認めさせることができた。また、過失相殺についても5%程度の裁判所の所見を獲得し、総額で1億5000万円の支払いとなった。

 なお、この件では、仕事中の事故でもあったことから、和解に際しても、労災保険の障害補償年金の受給もしていたことから、これとの調整に神経をつかった事案であった。