40台後半の主婦Aさんが、道路に停車中の軽自動車に乗っていたところ、後方から来た車両に追突されたという事案である。事故態様は単純であるが、Aさんの肩から腕に掛けてのしびれは強く、複数の整形外科、整骨院を尋ねるも、症状は改善しなかった。家事は、同居の長女に任せるような状況が続いた。最終的に事故後約2年を経て受診した大学の附属病院で、初めて「右大菱形骨舟状骨間靱帯損傷」の診断を受けるに至った。

 保険会社は、この診断が、事故後2年も経過していることから、Aさんの症状はそれ以前に固定状態に至っているのであり、かりに、上記の靱帯損傷が認められたとしても、それは本件の事故とは関係ないものであると強硬に主張した。

 診療を受けた各医療機関や整骨院からの診療録などの取り寄せによって、症状の推移や治療内容などについて、多くのやりとりがなされた。

 医師の尋問はなかったものの、Aさん本人が法廷で、肩から腕に掛けての重い症状によって寝たきりだったり、字も書けなかったり、家事も満足にできなかった状況をていねいに話をすることによって、裁判官にも理解をいただけた。

 判決では、概ね、Aさんの主張が認められる内容となり、保険会社の控訴もなく一審判決は確定した。

 交通事故においては、明確な医学的な知見が得られない場合に、「被害者の当たられ損」になってしまいかねない。厳密な科学的な証明を求める保険会社と、キチンと闘い被害者の被害の実態を法廷でていねいに話してもらうことの重要さを感じた事案である。