自転車で道路横断中の高校生K君が脳挫傷等の重い傷害を負い、最終的には高次脳機能障害(他の障害と合わせて併合5級の認定)として診断されるに至った。

 この件の特徴は、K君が、事故後高校中退をしたものの、その後、独力で高卒資格を取得し、専門学校に入学し、看護関係の国家資格を取得したということである。保険会社は、この点を捉えて,K君には、就労能力の低下は認められないとして、お抱え医師の鑑定意見書まで提出して、頑強に逸失利益の成立を争ってきた。

 たしかに、外形的には、上記の高卒資格の取得や、専門学校への合格、さらには国家試験の合格という事実からは、K君が充分、仕事に耐えられるようにも見える。しかし、実際は、面接をして採用されはするものの、数日後には不採用の通知を受けるということの繰り返しとなっていた。

 この点は、高次脳機能障害の特徴であるので、弁護士としては、K君の両親は元より、専門学校で一緒に勉強した友人たち複数、また専門学校でK君を実際に指導した教員の方にもお話をうかがい、上記の形式的な「試験の合格」では捉えきれない,K君の障害の状況をリアルに裁判所に提示することに努めた。

 「人の話をすぐに理解できない。」「計画的行動はできるが、同じミスを繰り返し、新しいことの学習や同時複数作業へ移行処理ができない。」「たまにいらいらして興奮することがある」「先生の名前も覚えられない」「道具の名前も覚えられない」等々。

 こうした周囲の人の協力の下で、お抱え医師の意見書には充分反論ができたと考えられる。

 この事件については、最終的には、8000万円の支払いを受けるということで裁判上の和解が成立した。しかし、まだまだ若いK君の将来のことを考えるとそれでも充分とはいえるものではなく、保険会社の抵抗を押し返して勝利的な解決はしつつも、複雑な思いの残る事件であった。